2014年09月14日

鴨川ホルモー

4043939019鴨川ホルモー (角川文庫)
万城目 学
角川グループパブリッシング 2009-02-25

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このごろ都にはやるもの、勧誘、貧乏、一目ぼれ。葵祭の帰り道、ふと渡されたビラ一枚。腹を空かせた新入生、文句に誘われノコノコと、出向いた先で見たものは、世にも華麗な女(鼻)でした。このごろ都にはやるもの、協定、合戦、片思い。祗園祭の宵山に、待ち構えるは、いざ「ホルモー」。「ホルモン」ではない、是れ「ホルモー」。戦いのときは訪れて、大路小路にときの声。恋に、戦に、チョンマゲに、若者たちは闊歩して、魑魅魍魎は跋扈する。京都の街に巻き起こる、疾風怒濤の狂乱絵巻。都大路に鳴り響く、伝説誕生のファンファーレ。前代未聞の娯楽大作、碁盤の目をした夢芝居。「鴨川ホルモー」ここにあり!!

プリンセス・トヨトミでは期待ハズレだったけど、こちらは面白かった!
前半は普通(より少しずれた主人公たち)の青春小説だったのに、後半、ついに鬼が登場してからは奇想天外な展開に引き込まれました。

キャラがとくに立っていて、「まさし」の大ファンの主人公と、存在感がまるでなかったヒロイン凡ちゃん、まったくイケていない帰国子女の高村の行動が笑えます。頭はいいんだけど、ちょっと抜けているタイプ。

まさしって呼び捨てにするから、小学校時代の友達のことかと最初思ったんですよね。そしたらそんまんまの人、さだまさし(笑) ミュージック・フェアのまさしを録画したのを、日本の流行を知らない高村に鑑賞させるとか、細かい描写が笑えます。
そしてレナウン音頭とか、センスが昭和チックなのが、プリンセス・トヨトミの時と同じ。真面目にギャグを語るタイプの作風が楽しい。

森見作品と似ている。というか、舞台も大学の同じ。昭和チックな青春なのも同じ。
どちらかといえば、ホルモーのほうが現実に近い作風でしょうか。ファンタジーのようにふわふわしていないです。

ホルモー登場するまでが長いから、そこで退屈してしまいそうなのが残念な点でしょうか。でも、これがデビュー作というんだから、完成度がかなり高いことに驚きです。
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2014年09月06日

伯爵と妖精―あいつは優雅な大悪党

4086003937伯爵と妖精―あいつは優雅な大悪党 (コバルト文庫)
谷 瑞恵 高星 麻子
集英社 2004-03

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リディアは、妖精が見えて、彼らと話ができる女の子。父に会うためロンドン行きの船に乗った彼女は、突然現れた若い男に誘拐されてしまう。エドガーと名乗るその男は、自分は伯爵だと言い、彼の身分を明かすための宝剣探しをリディアに依頼する。胡散臭いと思いながらも、彼と契約してしまうリディア。一方ちまたでは凶悪な強盗事件が噂になっていた。犯人の特徴はエドガーに似ていて…。

タイトルと表紙の絵柄から、もっと乙女チックな展開を予想していたら、アクションや謎解き満載の冒険たっぷりでした。
背景描写が少し足りないながらも、ヴィクトリア朝の雰囲気たっぷりでした。とくに胡散臭い青年貴族、エドガーが面白いです。いわゆる女たらしな美貌の貴公子。
が、意外な過去がなかばで明かされ、複雑な性格と闇もしっかりあるという奥深いキャラ。
それに対し、ヒロインの少女リディアは、とても素直で行動的。一筋縄ではいかなさそうなエドガーと、正面からぶつかる姿がよかったです。なんとなーくこれは恋?という時点でエンド。
ラブすぎず、適度なミステリー要素もあって、コバルトらしい娯楽小説でした。

アーミンという男装のメイドが気の毒な展開でしたが、もしそのまま健在だったら、シリーズ化したあと恋愛関係で泥沼化しそうでもあったんで、作者さん的にはそうするしかなかったのかも、と思ったり。

大人気のシリーズらしく、30巻以上も刊行されているのを知り、まとめ買いするには数が多すぎ。というか、巻数字まったく振ってないから、どれが続きなのかわかりにくすぎなのが困る(T_T) 苦情ないのかな、といつも不思議に思う……。せめてあらすじに第○弾、とか入れて欲しい。買っても置く場所がないのもあり、電子書籍化されたら続きを読むかもしれません。
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2014年02月01日

ボーンシェイカー ぜんまい仕掛けの都市

4150118523ボーンシェイカー ぜんまい仕掛けの都市 (ハヤカワ文庫SF)
シェリー・プリースト 市田 泉
早川書房 2012-05-10

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ブライアはライフルとガスマスクを手に、閉ざされた街へ降り立った―息子を救えるのはあたししかいない。掘削用ドリルマシン“ボーンシェイカー”が暴走し地下の毒ガスが噴出、シアトルの街は見境なく人間を襲う“腐れ人”が跋扈する地獄と化し、高い壁で閉鎖された。ブライアは、消えた父を追って街へ入った息子ジークを救うため、自らも壁の内側にむかう…。ネオ・スチームパンクの旗手によるローカス賞受賞作。

スチームパンクというフレーズとローカス賞にひかれて読んでみました。
一番印象的だったのが、主人公が少年の母親という設定。まるでターミネータのサラ。過去に傷を背負った彼女が、苦労しながら一人息子を育て悩む姿が新鮮でした。ファンタジー小説の主人公は少年少女、あるいは異型の美少女美青年が多いから。
そして白眉だったのが、パラレルワールドな19世紀のシアトル。毒とゾンビ(アメリカ人ってゾンビが好きなんだなーw)がうごめく暗黒都市で、生きる人々の姿がリアルかつ克明に描かれています。人種同士の対立もあったりして、泥臭いアメリカンファンタジー(SFとは言いがたいかな)も楽しめます。

そして驚きのラスト。主人公は知っていたけど、作者がうまい具合に文章に出さないからまったく気が付きませんでした。なるほど~。そうだったのか。

と、個性的で魅力あるスチームパンクのはずなんですが、ストーリーがかなりシンプル。その分、あれやこれやのキャラ同士のやりとりや、荒廃した町の描写が大半を占めています。600ページ超えにしては、その半分も要らない内容でした。
そこが魅力的だったらいいんですが、退屈。三割ぐらい読み飛ばしたかな。そうでもしないと、なかなか先が進まない。
もう少し、話をうまく取捨選択していれば読みやすかったかも。
設定やキャラはいいんですが、爽快感に欠ける、やや残念な読後感でした。
posted by 夏 at 21:32 | TrackBack(0) | 小説-ファンタジー | 更新情報をチェックする

2014年01月03日

丕緒の鳥 十二国記

4101240582丕緒の鳥 十二国記 (新潮文庫)
小野 不由美 山田 章博
新潮社 2013-06-26

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「希望」を信じて、男は覚悟する。慶国に新王が登極した。即位の礼で行われる「大射」とは、鳥に見立てた陶製の的を射る儀式。陶工である丕緒は、国の理想を表す任の重さに苦慮していた。希望を託した「鳥」は、果たして大空に羽ばたくのだろうか―表題作ほか、己の役割を全うすべく煩悶し、一途に走る名も無き男たちの清廉なる生き様を描く全4編収録。

やっと新作を読んだ!
……なんかいつもと雰囲気がちがったというか、ファンタジーを舞台にした文学のようでした。新潮文庫だったからでしょうか。少女小説っぽさがまったくなかった。
でもそれがよかったです。小役人や民らの貧しい生活や、逆境にめげない姿が淡々と書かれていて、細微まで練りこまれた世界観がリアル。ひとびとの息遣いが伝わってくるようです。

一番好きだったのが、青条の蘭。山を守るために――ひいては民の暮らし――国を守るために、周囲から理解されなくても、黙々とブナを再生しようとする主人公たちの姿に胸打たれます。
王や麒麟はほとんど登場しませんが、民あってこその国――それが十二国記という世界のお話なんだという、メッセージがひしひしと伝わる短篇集でした。

アマゾンレビュー見たら、賛否両論。とくに暗くてがっかり……というコメントがいっぱい。
たしかに暗いけども、私はあまり気にならなかった。というより、普段、ノンフィクションや歴史物読んでいたら、かなり悲惨な話や描写もあります。十二国記がリアルに感じられるのも、そういった人々の生きる業や悲しみ、そのなかにあるひとときの幸福といったバランスがうまくとれているからだと思います。
ハッピーエンドやライトな物語じゃないと読めない人、かなりたくさんいるんだな……というのが、個人的に驚きでした。
タグ:☆☆☆
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穴 HOLES

4062755874穴 HOLES (講談社文庫)
ルイス・ サッカー 幸田 敦子
講談社 2006-12-15

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無実の罪で少年たちの矯正キャンプに放りこまれたスタンリー。かちんこちんの焼ける大地に一日一つ、でっかい穴を掘らされる。人格形成のためとはいうが、本当はそうではないらしい。ある日とうとう決死の脱出。友情とプライドをかけ、どことも知れない「約束の地」をめざして、穴の向こうへ踏み出した。

以前、話題になっていたので読んでみました。
タイトルからしてもっと硬派な文学かと思っていたら、意外なほどユーモアたっぷりな児童文学でした。キッズ向けのアメリカ映画そのままの設定に登場人物たちが笑えます。
主人公の少年はいわゆるグズでのろまなんだけども、だれよりも誠実。それがやがて実を結んで、知らず知らずのあいだに、ご先祖様の因縁を断ち切るという壮大(?)なストーリー。
前半の苦労から終わりの胸のすくようなどんでん返しがたまらない読後感でした。気分転換にもおすすめできる娯楽小説です。児童文学なのでとっても読みやすかった。
穴を掘り続ける設定や大量の玉ねぎのその後とか、過去の伏線がうまく生かされている名作。
タグ:☆☆☆
posted by 夏 at 21:16 | TrackBack(0) | 小説-ファンタジー | 更新情報をチェックする