2016年08月13日

ヴィクトリア朝の性と結婚 性をめぐる26の神話

B00I7PNO26ヴィクトリア朝の性と結婚 性をめぐる26の神話 (中公新書)
度会好一
中央公論新社 1997-04-01

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ヴィクトリア文化は性を抑圧する文化であり、性に対するとりすました淑女ぶり、お上品主義である―このような考え方は、今世紀のみならず、当時からすでにあった。「中流階級の女たちは不感症に育てられる」「娼婦に落ちたら死ぬまで娼婦」「避妊を知らない」「未婚の母は召使に多い」など、本書は現在まで多くの人が受け入れている「神話」を26とりあげ、その虚構性を当時の日記や書簡、新聞の投書や漫画などの資料を通して検証する。

Kindle版があったので読んでみました。
あまり目新しい内容がなかった。あと、膨大な文献を紹介しているわりには、どのエピソードも深く書かれておらず物足りなかった。
ただ、ヴィクトリア朝そのものをあまり知らないときは、現代の感覚ではありえない内容でもあるので、新鮮に読めるかもしれません。

いくつか印象に残ったエピソードを。

・離婚制度はあったことはあったけど、女性が圧倒的に不利。男性は不倫をしても離婚しなくていいが、女性の不貞は離婚の要因になる。不倫された場合、妻が生活できないほどの暴力を夫から振われないと離婚はできない。
離婚するのが困難な場合、円満に別居生活をして、互いに関知しない覚書を交わすのが普通だった。

・慎ましい生活をしている中流階級の男性たちは晩婚化。結婚して妻を持つと、家庭も養わなくてはならないから貧しくなる。だけど、労働者の女性と結婚したら、階層ランクが落ちてしまうからそれもむずかしい。たっぷりと持参金を用意できる令嬢は、結婚後も裕福な生活を望むから、上の階級の紳士と結婚したがるのもある。

・中流階級の女性たちは性に無欲、とされていたが、それは妊娠の可能性を低くするためだった。当時、出産は命がけであり、妊娠を望まない女性は多かった。愛しあう相手との性交でオーガニズムを感じるのが怖かったのである。

あっけらかんとした文章なので、やや際どい内容もありますが、気軽に読めます。
道徳的な中流階級とそうでない労働者階級との対比が印象的でした。





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ビスマルク ドイツ帝国を築いた政治外交術

B00VPQGZMAビスマルク ドイツ帝国を築いた政治外交術 (中公新書)
飯田洋介
中央公論新社 2015-01-25

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一九世紀ヨーロッパを代表する政治家、ビスマルクの業績は華々しい。一八七一年のドイツ帝国創建、三度にわたるドイツ統一戦争での勝利、欧州に同盟システムを構築した外交手腕、普通選挙や社会保険制度の導入――。しかし彼の評価は「英霊」から「ヒトラーの先駆者」まで揺れ動いてきた。「鉄血宰相」「誠実なる仲買人」「白色革命家」など数多の異名に彩られるドイツ帝国宰相、その等身大の姿と政治外交術の真髄に迫る。

レビューの評価は高いですが、読む人を選ぶかもしれません。以下にその理由。

内容的に新書では収まらない量だと思いました。長いビスマルクの生涯を一冊にまとめようとしたためでしょうか、これでもか、と内容が記述ばかりで教科書を読んでいるようでした。だから、ビスマルクが政治家になったあたりから、読むのが飽きてしまって中断。その後、再読です。
19世紀当時のプロイセン史をある程度知っているほうが、いくぶんか読みやすいかもしれません。
個人的にはビスマルクの人となりのエピソードを生い立ちだけでなく、その後をもっと知りたかったです。

教科書で「鉄血宰相」として知られるビスマルクのイメージと、実際の彼の志は異なっていたようです。
ドイツを帝国にしたのも、あくまでプロイセンを一つの国として強くしたかった。そしてまとまりのないドイツ諸侯と揉めるのですが、ビスマルクはいつも才気でたくみに解決し、切り抜けます。外交も同様。
その選択がやがてナショナリズムへとつながり、冷酷な宰相として知られるようになりました。だけど、ビスマルク自身はあくまでもプロイセンを守るためであり、戦争も避けることができず仕方なしに、といった具合です。
保守派と社会派に分かれたドイツ議会のなかを、臨機応変に調整しながらドイツをひとつに纏める手腕が、一番の読みどころです。ある意味、抜け駆け、と言ったほうが近いかも。

意志の強いビスマルクだったから、皇帝ともたびたび衝突してしまいます。晩年、即位したばかりのヴィルヘルム二世と意見の食い違いにより、引退しました。
ビスマルクが首相を辞めたことで、保守的なドイツが進歩的に生まれ変わる、と国民は期待したのですが、実際は逆でした。さらにナショナリズムが強くなり、ついに第一次世界大戦の引き金を皇帝が引いてしまうのです。
その後、亡くなったビスマルクが再評価され、ドイツを強大な帝国にした彼はさらに神格化されました。

ビスマルクについてざっと知りたいときにおすすめです。歴史的に有名でも、実際はどのような政治を行ったのかはあまり知られていないのではないでしょうか。
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2016年05月03日

図説 英国貴族の令嬢

4309762220図説 英国貴族の令嬢 (ふくろうの本)
村上 リコ
河出書房新社 2014-09-25

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栄華をきわめた19世紀から20世紀初頭の英国、由緒正しい貴族の家に生まれた令嬢たち、壮麗な大邸宅、贅沢なドレス、狩猟に晩餐、舞踏会―華やかに見える彼女たちの日常、その裏側の現実は―?

ようやく入手、読了。

これ読むと、お嬢さまもラクじゃないなーと思います。
女性あまりの時代といわれたヴィクトリア朝。結婚相手を見つけるのがまず難関。持参金の問題もあって、お金のない令嬢は結婚するのも大変だったようです。
あと結婚したあとの生活も思いのほか多忙。上流階級の令夫人になると、家政だけでなく社交が生活の大半を占めました。

その他、コラムがなかなか知らなかった知識満載で、資料としておすすめです。

ただし、華麗で優雅なお嬢さま生活を期待して読んだら、現実との落差にがっかりするかも。読み物としてはやや堅苦しい部類に入ります。
ラベル:★★★
posted by 夏 at 17:21 | TrackBack(0) | 西洋史(雑学・専門) | 更新情報をチェックする

2016年04月02日

図説 英国のインテリア史&イングランドのお屋敷

4837309070図説 英国のインテリア史
トレヴァー ヨーク Trevor Yorke
マール社 2016-02-18

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英国で、すでに30冊以上が刊行されているトレヴァー・ヨークの歴史的建造物シリーズ、待望の邦訳版! 著者トレヴァー・ヨークの温かみのあるイラストとやさしい解説で、英国のインテリア史が手にとるように分かります。日本版シリーズ第3冊めは、イギリス国内におけるインテリア(室内装飾)の移り変わりを、分かりやすく解説したものです。ひとくちに「イギリスの家具、室内」と言っても、時代を追って見ていくと、大きく変化してきたことが分かります。イギリスの映画やTVドラマ好きの方には、「よく見るこの内装は、この時代特有のものなのか」といった発見が、小説家やイラストレーター、インテリアデザイナーの方には「こういう家具を置くとイギリスらしい雰囲気が出る」などのアイデアが得られるはずです。英国貴族が暮らしたお屋敷(カントリー・ハウス)の内装、ロンドン市内の人びとが住んだ部屋のしつらえ、木彫細工が美しい木製の椅子、アーツ・アンド・クラフツ様式の壁紙などの手描き図版が満載です。英国を舞台にしたイラストや漫画を描きたい方、海外小説の背景を知りたい方、インテリアや建築の歴史に興味がある方、アンティーク家具好きの方におすすめ。

ボリュームが少ないのがやや残念。それ以外はよかったです。

まずチューダー朝から始まり、ジョージ王朝の前後、摂政時代、ヴィクトリア朝前半とアールヌーボーが入る後半+エドワード朝、その後のアールデコ様式となっています。
とくに美しいのが18世紀ごろのお屋敷。フランスのロココ調とはちがう、爽やかでシンプルなイギリスのインテリアを知ることが出来ます。貴族のお屋敷もその当時に建設されたのが多いのでしょう。

細かい装飾や家具についての名称、使い方、デザインは「映像を見る」だけでは理解しづらいんですよね。
でもこれがあれば、いつごろの時代のデザインでどのような名称なのかが理解できるので、西洋ものの小説を書くのに役立つのではないでしょうか。
こういうのってありそうでなかなかないので、もっと昔に出版されていたら助かったのになーと、ジェラシーが出てしまったw

コンパクトにまとめられているのもあって、基本をおさえることができます。
とくによかったのが階段の手すりと壁紙の解説。
資料としておすすめです。

4837309054図説イングランドのお屋敷 ~カントリー・ハウス~
トレヴァー ヨーク
マール社 2015-10-19

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後日読了。
インテリア同様、歴史の流れにそって紹介されています。
お屋敷の外観を知りたい場合と、お部屋について簡単に知りたい場合におすすめ。基本をしっかりおさえることができるため、資料として重宝すると思います。

個人的にはインテリアのほうが、資料として貴重なのもあって活用度が高いかも。
資料としてのおすすめは、あれこれ網羅されているお屋敷バージョン。
ラベル:★★★
posted by 夏 at 17:25 | TrackBack(0) | 西洋史(雑学・専門) | 更新情報をチェックする

2016年03月13日

死刑執行人サンソン――国王ルイ十六世の首を刎ねた男

B015C511L4死刑執行人サンソン――国王ルイ十六世の首を刎ねた男 (集英社新書)
安達正勝
集英社 2003-12-22

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敬虔なカトリック教徒であり、国王を崇敬し、王妃を敬愛していたシャルル‐アンリ・サンソン。彼は、代々にわたってパリの死刑執行人を務めたサンソン家四代目の当主であった。そして、サンソンが歴史に名を残すことになったのは、他ならぬその国王と王妃を処刑したことによってだった。本書は、差別と闘いながらも、処刑において人道的配慮を心がけ、死刑の是非を自問しつつ、フランス革命という世界史的激動の時代を生きた男の数奇な生涯を描くものであり、当時の処刑の実際からギロチンの発明まで、驚くべきエピソードの連続は、まさにフランス革命の裏面史といえる。

これはすごかった、そして面白かった。
まず処刑人の生涯をテーマに書いたものが珍しい。そしてかのフランス革命時、何千人もの人を処刑せざるを得なかったサンソンの苦悩が書かれています。

フランスにおける処刑人の地位は最下級。人が嫌がる仕事=卑しいという価値観が当時そのまま。他の国はどうだかわかりませんが(まずそういう資料本事態少ないと思う)、最底辺なのにどうしても必要な職業だから、王家から特権を認められるのがすごく矛盾しているという。

処刑だけでなく医業もあったので本を読む必要がありました。教養が必要だったのもそのため。でもやはり当時らしく、処刑人の子どもは差別されてしまい、寄宿学校を追い出されたサンソンが気の毒すぎ……。

そんなこんなの残酷と人道と苦悩が交差するエピソードがたくさんあります。
そのなかで印象的だったのが、ギロチンはもともと人道的配慮から生まれた処刑道具だということ。
苦しまずに死なせるよう、瞬時に首が切れる道具は現在の感覚では残酷そのものですが、当時の価値観にしてもれば、とても画期的。それがかえって災いとなり、革命後の粛清の嵐では、次々と冤罪のひとびとまでがスピード処刑されてしまいます。
サンソンはここでもっとも苦悩するのですが、やはり執行しないと、国の秩序が保たれず、サンソン一族も殺されてしまいかねなこともあり、淡々と処刑する様子が書かれています。

ルイ16世の人となりも書かれており、温厚で賢明な王だったけど、時代がちょうど革命のころで運が悪かったのだとありました。これ、書物によってはバラバラでして、愚鈍だったから逃亡に失敗して、処刑される羽目に陥ったのだと書かれているものもあります。
どちらにしても、死刑制度そのものの是非を問いかける内容になっていました。
(恐怖政治を生み出す可能性がある処刑制度はよくないけど、まったくないとリスクを恐れず犯罪をおかす者がいそうで、なかなか難しい問題だと思います)
ラベル:★★★
posted by 夏 at 14:06 | TrackBack(0) | 西洋史(雑学・専門) | 更新情報をチェックする
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