2012年12月01日

名もなき毒

4167549093名もなき毒 (文春文庫)
宮部 みゆき
文藝春秋 2011-12-06
楽天ブックス
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今多コンツェルン広報室に雇われたアルバイトの原田いずみは、質の悪いトラブルメーカーだった。解雇された彼女の連絡窓口となった杉村三郎は、経歴詐称とクレーマーぶりに振り回される。折しも街では無差別と思しき連続毒殺事件が注目を集めていた。人の心の陥穽を圧倒的な筆致で描く吉川英治文学賞受賞作。

ミステリーというより、ホラーに近い。あらすじにあるとおり、一番の肝はサイコパスな女性、原田(ゲンダ)いずみ。彼女の登場によって、平穏だった日常が崩れていきます。
やっぱり○○するのかと予想したら、予想通りの展開へ。こういうキャラクター読むたびに、私が出会った自己愛性人格障害者たちを思い出してしまう。やつらは支離滅裂でいつ○○しても不思議じゃないような行動&言動するし、知能があるタイプがとくに恐ろしいです。

あまり書いたらネタバレになるので、曖昧になってしまいますが、前半がもったいぶった割りには後半の展開が、あっけなかったのが残念でした。なんとなく話がしまってないとうか、だらだらと進んでいく感じ。とくにラストの選択……絶対に主人公、向いてないよそれ、と突っ込んだらきちんとスルーしていったのが、あっけなかったというか(苦笑 

テーマは現代人の生きづらさ。それを「毒」と表現しているよう。どんなに注意していても、その毒はじわじわと人々を蝕むんでゆく。
要するにバブルのころとはちがって、貧富の差が大きくなってしまった時代に生きる若者たちの「怒り」=「毒」が、事件の核心。だからでしょうか、加害者となる人たちの人生背景が濃い目に描かれていて、犯人なのに同情してしまうのが、宮部作品のうまさだな、と思いました。
シリーズ作品の2作目だったようで(解説読むまで気がつかなかった)、この前の事件、お手柄だと言われていた謎が解けた。そうだったのか~。

文学賞を取っただけあって読みやすく面白かったですが、全体的にパンチ力が足りず、私には物足りませんでした。ミステリーよりも、人間ドラマとして読んだほうがいいかも。


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2012年09月05日

マン島の黄金

4151300643マン島の黄金 (ハヤカワ文庫―クリスティー文庫)
アガサ クリスティー Agatha Christie
早川書房 2004-10
楽天ブックス
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クリスティーの死後、新聞や雑誌等に掲載されたきりで、ファンの間でのみ囁やかれてきた幻の作品群を発掘。表題作であるマン島の観光客誘致のために書かれた宝探し懸賞小説や、謎の失踪事件の直前に書かれた小説、ポアロやクィンの謎解きミステリ、心理サスペンス、ホラー、ロマンスなど、バラエティに富んだ拾遺集。
【目次】(「BOOK」データベースより)
夢の家/名演技/崖っぷち/クリスマスの冒険/孤独な神さま/マン島の黄金/壁の中/バグダッドの大櫃の謎/光が消えぬかぎり/クィン氏のティー・セット/白木蓮の花/愛犬の死

ミステリーと苦い恋愛物や幻想物が半々。1920年代に書かれた作品が多め。
面白かったのは、やっぱり名探偵ポアロシリーズ。「クリスマスの冒険」と「バグダッド大櫃の謎」は短い話だけど、きちんと事件&推理が展開されているのだからたまりませんでした。複数人から犯人を暴き出す展開です。
ドラマとして面白かったのを以下に。

「名演技」…ミステリー初期らしくトリックは単純だけど、職業を生かしたオチが楽しかったです。
「孤独な神様」…ふたりが出会ったのが大英博物館の異教偶像の展示室という設定が、当時のイギリスらしくて好き。そして彼女の意外な正体にもロマンスがたっぷりでした。
「マン島の黄金」…話の謎解きが明かされないのは、本当にマン島でのお宝探し企画に使われたお話だから。現実とリンクしているのが面白いし、だれにも見つけられなかった宝もあったというオチも愉快。ただ企画そのものはあまり成功とはいえなかったよう。地元住民が参加できない決まりになっていたのが要因だとか?
「愛犬の死」…ペットのご主人への悲しい愛。ありがちな小説ネタとはいえ、やっぱり自分の死で、飼い主に幸福をもたらす展開には涙、涙。

出版社は当時、クリスティが恋愛物を書くのを快く思っていなかったそうで、別名義で出版されています。だけど、ミステリーのほうがずっと面白いから、難色を示すのも仕方なかっただろうな、と本書を読んで思いました。
作家本人が書きたい作品が必ずしも売れるとはいえない、という現実をクリスティも背負っていたようです。
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2012年09月01日

GOSICK -ゴシック- VIII 神々の黄昏 上・下巻

4044281211GOSICK -ゴシック- VIII 上 ゴシック・神々の黄昏 (角川文庫)
桜庭 一樹
角川書店(角川グループパブリッシング) 2011-06-23
中古本
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GOSICKVIII下‐ゴシック・神々の黄昏‐ (角川文庫)GOSICKVIII下‐ゴシック・神々の黄昏‐ (角川文庫)
桜庭 一樹

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クリスマス当日、ヴィクトリカが所望したのは、15個の謎―必死で謎を集める一弥は、村に起こりつつある異変に気づく。それは、大いなる変化、すなわち“2度目の嵐”の前触れにほかならなかった。迫る別れと、自分の運命を正しく予感したヴィクトリカは、一弥にある贈り物をする。一方首都ソヴレムでは、ブロワ侯爵が暗躍、娘ヴィクトリカを武器に権力を握ろうとしていた―大人気ミステリ怒涛の最終ステージへ。

ついに最終巻。上巻の前半はいつものGOSICKでしたが、一弥が強制送還された後半からは怒涛の展開へ。史実をもとにしていた第一次世界大戦でしたが、なぜか第二次は1925年勃発とかなりハイペース。新大陸vs旧大陸の戦いとなっています。
前から感じてはいたけど、このシリーズは歴史ファンタジーということ。だから戦争描写の年代がちょっと古くても、IFの物語だと思えばあまり気にならないです。
当初から疑問だった一弥の母国をなぜ明記しなかったのか。いろいろ配慮があるのかな。にしても、アメリカ、イギリス、フランス、ドイツ、リトアニアまであるんだから、日本もあっても大丈夫とは思うけども。ファンタジーなんだし。

ブロワ侯爵って、俗物の悪者だったのですね。うーん、もっと深い何かがあると思っていたパパだけど、あまりにも俗悪で、ずっと利用されていたグレヴィールが気の毒……。そんな彼も、妹ヴィクトリカが囚われの身になって、良心がとがめたシーンがよかった。口は悪くても、根は兄妹だったんだ、と。しかし失恋したままのラストが、やはり気の毒に。ジャクリーヌに代わる、良い人が現れたらいいですね(笑)

あと当初で一弥たちと別れたままだったアブリルは、イギリスに帰ったあと、戦火に巻きこまれていつもと雰囲気がかなりちがっていた。かなりシリアス。(実際の空襲はそんなものじゃないけど、あくまでもシリーズを通した比較)でびっくり。
そしてついにママンと再会――かと思ったら、あまりのショッキングなラストにも驚き。
セシル先生も村に非難して、戦争におびえていて、今までの内容とはだいぶ異なったドラマチックな群像劇でした。ミステリー度は低かったです。

少年兵として出征した一弥は、特攻隊のようになるのかと思ったけど、そうじゃなかった。ただ戦場はヨーロッパのようで(明記されてないので想像ですが)、ずいぶん遠くまで出兵したんだな、とも。中国やロシアをすっ飛ばして行くんだから、地理的にも無理があるような気が。だから日本、と明記せず、あくまでも東洋の島国ですませた謎が、ラスト近くでようやく判明しました。ずっと気になっていたのは私だけ?(苦笑)
戦場シーンといっても、ラノベなので残虐なシーンはほとんど書かれていません。ただ戦争ものを読んだことがない人にはキツイ展開かもしれないけども。

一番、驚愕したのが、一弥が学園から連れ去れれる直前に残したメモの内容。
どうして文章がないのか、中味がなんなのかずっと気になっていたんだけど、なんと○○だったとは!!!
言われてみればとっても現実的な内容なんだけども、ドラマチックな展開を期待しているから、まったくちがったのを想像していました。
それを肌に刻んだヴィクトリカの姿は、それはもうとってもシュールで滑稽なんだけども、それだけふたりの絆が強く結ばれている証でもあり、再会したシーンは感動ものでした。

シリーズを通した感想ですが、小さな矛盾や無理な設定、超単純な謎、微妙におかしな語彙、状況描写不足など欠点は多々あるにはあるけど、それを補うだけの魅力がキャラクターに備わっています。まさしくベストセラー小説的な面白い物語でした。歴史をよく知らない人が読んだら、さきが読めず、さらにわくわくするんじゃないでしょうか。
ラベル:☆☆☆
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2012年08月29日

GOSICKVII‐ゴシック・薔薇色の人生‐

4044281157GOSICKVII‐ゴシック・薔薇色の人生‐ (角川文庫)
桜庭 一樹
角川書店(角川グループパブリッシング) 2011-03-25
楽天ブックス 中古本

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クリスマス直前の気分に華やぐ聖マルグリット学園。だが、外の世界では「2度目の嵐」が迫りつつあった。父ブロワ侯爵によって首都ソヴレムに召喚されたヴィクトリカ、心配で後を追う一弥。ソヴュール王国最大のスキャンダルにして謎、王妃ココ=ローズの首なし死体事件に挑むふたりに侯爵の謀略が…。豪華劇場に過去と現在が交錯し、大いなる罪が暴かれたとき、世界はその様相を変える。ヴィクトリカと一弥の運命は―。

トリックはほぼ予想通り。ヒントが多いからすぐにピンときました。オチのさらにオチで、自分の予想が大当たりしていたのが嬉しかった~! あれじゃあまりにも寂しい事実だな、と思っていたから。ただ被害(?)にあった○○○はとても気の毒だったけど……。
ラストへ向けての伏線でしょうか、つぎなる大戦の匂いが書かれていました。ということは、一弥とヴィクトリカも巻き込まれる??? あとは読んでのお楽しみですね。

王妃とリヴァイアサンの繋がりがこの巻で伏線になっていたということは、シリーズを通しての構想だったのですね。だから主要キャラたちのいろんな過去や秘密がぞくぞく明かされる7巻目は、謎解きよりも面白かったです。謎解きは単純だからおまけと思いながら、いつも私は読んでいる。ミステリーを期待したら、肩透かし(汗

セシル先生と寮母ゾフィの関係も意外。そんな昔からの知り合いだったとは。だから先生はお嬢さまっぽいキャラだったみたい。見かけによらず苦労している。
そのセシル先生、大きなスーツケースに入ったのはいいけど、持ち上げたとき重いからおかしいって、グレヴィールは気がつかないのでしょうか。衣装と人間だと重量ちがいすぎw
あとずっとヴィクトリカの頭に止まったままの鳩も、糞とかだいじょうぶなのかな、としょうもないことが気になってたまらなかったというww 鳩がじっとしているのもありえないし。兎も同様。
その点がラノベを強調していた7巻でした。

あと個人的にひっかかったのは、ココ王妃を国民だれもが「おとなしい王妃様」と呼んでいたこと。おとなしいっていう語感は、どちらかというと相手を下に見ているときに使わないでしょうか??? おとなしいに代わる語句、ほかにもあるのに(寡黙とか内気とか)、なぜあえてそれを使ったのかが気になりました。
もしかしたら年少の読者にもイメージを伝えたいから、おとなしいを何度も使ったのかな?
細かいといえば細かいけども、ベストセラーかつ直木賞作家さんの作品だから、鵜呑みする若い読者がいるんじゃないかと気になりました。辞書を引けばたしかに悪い意味は含まれていないにしても、世間ではあまり良い意味で使われていないから、庶民の会話で自然に出てくるのことへの違和感があったのです。
おとなしいを目上や立場が上の人に使ったら、気分を悪くされるかもしれないので、ご注意を……。
posted by 夏 at 20:32 | TrackBack(0) | 小説-ミステリー | 更新情報をチェックする

2012年08月23日

GOSICKVI ―ゴシック・仮面舞踏会の夜―

4044281130GOSICKVI ―ゴシック・仮面舞踏会の夜― (角川文庫)
桜庭 一樹
角川書店(角川グループパブリッシング) 2010-11-25
楽天ブックス
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謎の修道院“ベルゼブブの頭蓋”から辛くも脱出したヴィクトリカと一弥は、豪華列車オールド・マスカレード号で、一路懐かしいソヴュールへ。そこで出会った乗客たちは、それぞれ奇妙な名乗りを上げる。“死者”に“木こり”、“孤児”に“公妃”。やがて起こった殺人事件、三つの嘘とひとつの真実、いや、もしかしたら、すべてが…?誰もが誰かを演じる仮面舞踏会の夜、深まる混沌にヴィクトリカの推理が冴えわたる。

犯人はあいつにちがいない。だって少女が死んだのは、あれが原因なはず。あれしかないし、それじゃなかったらあれしか……なぜだれも着目しないんだろう、と予想したら、思った通りの展開。もしタイミングがずれたら、まったくミステリーにならず、すぐに逮捕されたかもね、犯人。というかそもそも設定そのものが偶然に偶然が重なりすぎ(苦笑)

ミステリーよりも、今回は登場人物たちの背景がいろいろバラエティーに富んでいて面白かったです。そして正体が暴露された○○の正体がじつは××というどんでん返しが意外すぎてびっくり。一番の探偵は新聞記事な事件でした。
列車の旅と殺人事件といえば、オリエント急行殺人事件を彷彿とさせる内容。時代が重なっていることといい、オマージュなのかな。
あとヴィクトリカが犯人に一弥への友情を熱くかつ短く語るセリフが読みどころ。一見すると変わらないようで、そのじつ語らない部分でしっかり絆ができている。そのさきがどうなるのか……。
あまり書いたらネタバレするので、控えておきますが、ついにヴィクトリカのパパである侯爵と次巻から対決するのでしょうか。ママも出てきそう。そんな予感がする読後感でした。
posted by 夏 at 21:22 | TrackBack(0) | 小説-ミステリー | 更新情報をチェックする
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