2016年08月13日

ビスマルク ドイツ帝国を築いた政治外交術

B00VPQGZMAビスマルク ドイツ帝国を築いた政治外交術 (中公新書)
飯田洋介
中央公論新社 2015-01-25

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一九世紀ヨーロッパを代表する政治家、ビスマルクの業績は華々しい。一八七一年のドイツ帝国創建、三度にわたるドイツ統一戦争での勝利、欧州に同盟システムを構築した外交手腕、普通選挙や社会保険制度の導入――。しかし彼の評価は「英霊」から「ヒトラーの先駆者」まで揺れ動いてきた。「鉄血宰相」「誠実なる仲買人」「白色革命家」など数多の異名に彩られるドイツ帝国宰相、その等身大の姿と政治外交術の真髄に迫る。

レビューの評価は高いですが、読む人を選ぶかもしれません。以下にその理由。

内容的に新書では収まらない量だと思いました。長いビスマルクの生涯を一冊にまとめようとしたためでしょうか、これでもか、と内容が記述ばかりで教科書を読んでいるようでした。だから、ビスマルクが政治家になったあたりから、読むのが飽きてしまって中断。その後、再読です。
19世紀当時のプロイセン史をある程度知っているほうが、いくぶんか読みやすいかもしれません。
個人的にはビスマルクの人となりのエピソードを生い立ちだけでなく、その後をもっと知りたかったです。

教科書で「鉄血宰相」として知られるビスマルクのイメージと、実際の彼の志は異なっていたようです。
ドイツを帝国にしたのも、あくまでプロイセンを一つの国として強くしたかった。そしてまとまりのないドイツ諸侯と揉めるのですが、ビスマルクはいつも才気でたくみに解決し、切り抜けます。外交も同様。
その選択がやがてナショナリズムへとつながり、冷酷な宰相として知られるようになりました。だけど、ビスマルク自身はあくまでもプロイセンを守るためであり、戦争も避けることができず仕方なしに、といった具合です。
保守派と社会派に分かれたドイツ議会のなかを、臨機応変に調整しながらドイツをひとつに纏める手腕が、一番の読みどころです。ある意味、抜け駆け、と言ったほうが近いかも。

意志の強いビスマルクだったから、皇帝ともたびたび衝突してしまいます。晩年、即位したばかりのヴィルヘルム二世と意見の食い違いにより、引退しました。
ビスマルクが首相を辞めたことで、保守的なドイツが進歩的に生まれ変わる、と国民は期待したのですが、実際は逆でした。さらにナショナリズムが強くなり、ついに第一次世界大戦の引き金を皇帝が引いてしまうのです。
その後、亡くなったビスマルクが再評価され、ドイツを強大な帝国にした彼はさらに神格化されました。

ビスマルクについてざっと知りたいときにおすすめです。歴史的に有名でも、実際はどのような政治を行ったのかはあまり知られていないのではないでしょうか。
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2016年08月07日

イギリス 繁栄のあとさき

B00JQYYHKKイギリス 繁栄のあとさき (講談社学術文庫)
川北稔
講談社 2014-03-10

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今日、イギリスから学ぶべきは、勃興の理由ではなく、成熟期以後の経済のあり方と、衰退の中身である――。産業革命を支えたカリブ海の砂糖プランテーション。資本主義を担ったジェントルマンの非合理性。英語、生活様式という文化遺産……。世界システム論を日本に紹介した碩学が、大英帝国の内側を解き、歴史における「衰退」を考えるエッセイ。(講談社学術文庫)

歴史的なエピソードが思ったより少なかったのが残念でした。レビューが概ね好評だったから、期待してしまったのがいけなかったのかも……。

書かれたのが30年ぐらい前なのもあって、内容的には古いです。まだまだアメリカが強くて、中国に期待され始めたころ。だからでしょうか、グローバル化されすぎて、移民や難民、絶え間ない紛争で世界がここまで不安定になるとは著者も予想していなかったのでしょうね。
じょじょに先進国が衰退していくのは仕方がない反面、中国等の新興国が大国になった今、これから世界を担えるのかは甚だ疑問です。

要するに16世紀に世界一発展したオランダのように、イギリスもじょじょに衰退していくのは避けられないということらしいです。
周辺諸国が安い製品を作るようになると、工業だけでは国が持たないから、つぎは金融へシフトする。しかし、目に見えない金融商品は、政情や景気に左右されやすいのもあって、じょじょに国が衰退してしまいます。先進国がたどる道。
その金融界をリードしてきたのが、ジェントルマン教育を受けたイギリスの紳士たち。彼らがある意味、イギリスらしい経済を創りだしたのです。

しかし一度、先進国になると、世界をリードするだけの存在は残ります。それがいまだ、途上国のままの国とはちがうところ。いくら開発をされても、先進国が豊かになるために開発されてしまうと、なかなか発展しないそうです。それが低開発化された国。サトウキビや綿花、バナナ等のプランテーションが盛んな国がそうです。

表紙や図版はヴィクトリア朝に描かれたものなのに、エピソードはそぐわない内容でした。なぜ、そのイラストを掲載したのかは、解説すらありません……。
20世紀を総括する経済書としてはいいけど、歴史書としては弱いです。
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2016年07月17日

大いなる遺産

B00LBBQKOM大いなる遺産(上)
ディケンズ 山本政喜
グーテンベルク21 2014-07-04

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クリスマスイブの夕暮れ、鍛冶屋の少年ピップは足かせを付けた脱獄囚に捕まり、やすりと食い物をもってこいと脅かされる。このときの恐ろしい経験はあとあとまで尾をひく……田舎暮らしのピップに、降ってわいたように莫大な遺産相続の話がころがりこむ。送り主は誰なのか、世話になっている異様な金持ち夫人のミス・ハヴィサムか? ピップはミス・ハヴィサムの養女エステラへのかなえられない思いを胸にロンドンに出る。だが友人もでき、都会生活にうつつをぬかすピップのまえに、謎の人物が姿をあらわす……話は急転直下、緊迫の度をまし一気に終末へ。皮肉とユーモア、ミステリーと冒険活劇が一体となったディケンズ晩年の傑作。

翻訳された時代が古いためか、それとも直訳に近い表現のためか、言い回しが婉曲で話の流れがわかりにくいシーンがいくつもありました。結局あの時主人公はそう思っていたのか、と後の言い回しで知ります。そこがやや残念でしたが、お話としては面白かったです。さすがディケンズ、と。

お話は三部構成になっていて、一部が主人公ピップの少年時代。
鍛冶屋の姉夫婦のもとで暮らし、ある夜、偶然知り合った囚人を救うことから話が始まります。その後、町のお金持ちの老令嬢の世話をし、成長したら鍛冶屋を継ぐために徒弟になるのですが、突然、某人物がパトロンとなってピップを支援することに。そして第二部まるまる使って、一端の紳士に成長するも、第三部でパトロンの正体に驚き、恐怖し……。
という展開です。

あらすじにすると短くまとまるのですが、昔の小説だけあってなかなか話が進まないのがもどかしい。だけど、三部の急展開からあとは読むのをやめられないほどでした。
まさしく怒涛の展開。一部に潜んでいた伏線が一気に回収されるストーリー展開が圧巻。そしてディケンズらしい、人情というか人間模様に胸を打たれます。
オリバー・ツイストのように悪人がそのままに描かれず、あれだけ忌み嫌っていたはずの脱獄囚の最期をピップが看取るのに涙。
そして貧しくて無学だからと遠巻きにしていた義兄のジョーが、とっても誠実な男――中味は彼のほうが紳士だったというストーリーに感動。
ハッピーエンドとはいかないまでも、その後のピップの生き方にリアリティがあって、満足な読み応えでした。
オリバー・ツイストより大いなる遺産のほうが、ずっとよかった。もっと早く読んでおけば、と少し後悔。
ラベル:☆☆☆
posted by 夏 at 18:17 | TrackBack(0) | 西洋史(古典・小説) | 更新情報をチェックする

ベルセルク 38 他

B01GZH4AGQベルセルク 38 (ヤングアニマルコミックス)
三浦建太郎
白泉社 2016-06-24

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変貌を遂げた世界で、安全な土地を求め旅に出たリッケルトとエリカは魔物に襲撃されたところを新生鷹の団に救われた!導かれるがままに辿り着いたのは白き鷹グリフィスが君臨する都ファルコニアだった。グリフィスと鷹の団への複雑な想いを胸に秘めたリッケルトは…。一方、海神の危機を脱したガッツ一行はキャスカの身の安全と、精神の回復の望みをかけパックの故郷、妖精島へ向うのだった。

ほぼリッケルトが主人公。
ようやく読めた続きはとっても面白かった!!!
最後の話でついにガッツ一行が妖精島に到着するので、いよいよクライマックスへ向かうのでしょうか。そうあって欲しい。
20年以上も読み続けているから、できれば数年以内にラストに到達して欲しい。背景少しぐらい手抜きでもいいから……。

その他、最近読んだマンガ

B01DDOQ7H4ゴールデンカムイ 7 (ヤングジャンプコミックスDIGITAL)
野田サトル
集英社 2016-04-19

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壮絶なひとくいヒグマとの闘い!
残酷なシーンてんこもりですが、あいかわらずシュールなギャグとの落差に笑えます。
まさかのBL展開w 杉元のしらけ顔で〆るラストがシュールすぎw
あと競馬のあれこれのうんちくが歴史マンガらしくてよかった~!

B01FCT0YVSふしぎの国のバード 2巻<ふしぎの国のバード> (ビームコミックス(ハルタ))
佐々 大河
KADOKAWA / エンターブレイン 2016-05-14

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1巻より絵が洗練されてました。
あえて難儀な道程を選ぶのがバード女史らしい。そしてあまり知られていない明治時代の裏日本――新潟の貧しい現状がこれでもかと描かれていました。
北海道に到達するまでまだまだかかりそうですが、先が楽しみな作品。
posted by 夏 at 17:55 | TrackBack(0) | コミック(少年・青年) | 更新情報をチェックする

2016年05月28日

写真で見るヴィクトリア朝ロンドンとシャーロック・ホームズ

4562052953写真で見るヴィクトリア朝ロンドンとシャーロック・ホームズ
アレックス ワーナー
原書房 2016-02-25

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ロンドン博物館が収集展示した貴重な図版と資料を中心に、ヴィクトリア朝後期のロンドン――コナン・ドイルの生活からホームズが歩いた町並みを活写。
見たことのない古き良きロンドンがここにある。

地図と写真を参考にしながらホームズが活躍したロンドンを紹介する内容――かと思ったら、考察が大半でした。
ホームズが活躍した19世紀末ロンドンについてのあれこれを書いてます。

以下、項目と簡単な内容を紹介。

・(間違った)正体?
……いわゆる序章。ホームズが活躍した当時のロンドンは、警察機構が整ったものあって劇的に凶悪犯罪が低下した時代。諮問探偵であるホームズへの依頼はあまりなかったはず。かといって、つまらない小悪党を捕まえる仕事には興味を持っていないのもあり、たびたび上中流階級の依頼人が訪れるという設定そのものがフィクション=間違ったロンドンのイメージ。
あと作者ドイル自身、ロンドンに定住したのはほんの一年足らずだったため、物語のロンドン描写が薄かった。設定ではホームズはロンドンに詳しいとあるので矛盾している。

・シャーロック・ホームズの”ボヘミアン的な生活習慣”
……ボヘミアン=自由な生活を謳歌する生き方のこと。労働者のようにあくせく働かず、結婚生活に縛られない彼らは、そう呼ばれた。上中流階級の紳士や芸術家、有名俳優など。ホームズもそのひとり。夜になると仲間と集い、飲食喫煙をしながら語らった。厳格だと思われがちなヴィクトリア朝の道徳へのアンチテーゼ。

・シャーロック・ホームズ、シドニー・パジェット、そして<ストランド>
……ドイルは連作形式の連載を初めて試みたことで、ホームズシリーズに多くのファンを作った。長編連載だと途中の号から読み始めた読者は脱落してしまうが、読み切り短編形式だとどの号でも楽しめるという画期的なアイデアだった。登場人物は同じだから、連載もののように愛着がわくのも成功した理由のひとつ。

・シャーロック・ホームズのアート
……当時のロンドンの街を描いた絵画の紹介と解説。

・ホームズを切り捨てる
……連載当初は現代的な探偵だったホームズだが、休載ののち復活したころは時代遅れになっていた。20世紀以降、常に近代化するロンドン。町並みはすっかり変わり、情報伝達も桁違いに増え、ラジオの登場。そして世界大戦で、さらに時代は進むも、物語のなかのホームズは19世紀末のまま。それでも絶大な人気があったホームズを、結局ドイルは切り捨てることができなかった。

・無声映画のシャーロックたち
……ドイルが存命のときからすでに劇場化、そして映画されたホームズもの。1911年に著作権法ができるまでは、無断上映や海賊版が横行していた。19世紀末を舞台にした映画は以外に少なく、上映されたその時代を舞台にしたドラマが大半だった。

ロンドンとホームズの写真やイラストがたくさんありますが、資料としては少し弱いかもしれません。ホームズ好きなら読み物として楽しめます。
当時のロンドンの雰囲気や出版事情について知りたかったらおすすめです。
ラベル:★★★
posted by 夏 at 21:29 | TrackBack(0) | 西洋史(雑学・専門) | 更新情報をチェックする